初期のゴリゴリ音を「ただの首コリ」と見過ごして放置し続けた場合、骨格の変形と神経障害という二重のドミノ倒しが始まります。近年の臨床現場では、スマートフォンやPC作業に伴う「ストレートネック(スマホ首)」を基盤として、頚部疾患を早期発症する20〜40代が激増しています。
本来、人間の頸椎は前方に緩やかなカーブ(前弯)を描くことで、約5キログラムの頭部にかかる衝撃をスプリングのように分散しています。しかし、頭部が前に2〜3センチ突き出た姿勢を続けると、首にかかる実質負荷は通常の3〜4倍(約15〜20キログラム)にまで跳ね上がります。この慢性的な重圧に耐えかねた椎間板がつぶれ、関節軟骨が摩耗していくプロセスこそが「頸椎症」の本態です。
さらに変性が進行すると、椎間板の中身である髄核が外に飛び出し、神経を圧迫する「頸椎椎間板ヘルニア」へと移行します。初期段階では首の張りや鈍痛程度ですが、神経根が強く圧迫されると、肩から腕、指先へと走る電撃的な放電痛や、手の感覚鈍麻(ボタンがかけづらい、ペットボトルのフタが開けにくいといった運動麻痺)が出現します。
また、首の深部には交感神経幹が密集しているため、後頭下筋群の過緊張や頸椎の変位は自律神経系を激しく揺さぶります。原因不明の頭痛、めまい、耳鳴り、慢性的な倦怠感、胃腸の不調といった不定愁訴を訴える患者の背景に、実は慢性化した首の機能不全が潜んでいるケースは臨床上極めて多いのが現実です。