人間の骨格筋は、大きく分けると「タイプ1線維」と呼ばれる遅筋線維と、「タイプ2線維」と呼ばれる速筋線維の2種類で構成されています。医療やスポーツ現場では、その色調から前者を「赤筋」、後者を「白筋」と呼び分けるケースも少なくありません。この色調の差異は単なる外見の違いにとどまらず、細胞内部でエネルギーを取り出す仕組みそのものを物語っています。
遅筋が赤く見える直接の要因は、細胞内に酸素を貯蔵するタンパク質であるミオグロビンとエネルギー代謝を担うミトコンドリア、そしてそれを取り巻く毛細血管が極めて豊富に密集している点にあります。遅筋は血液から供給される酸素を用いて、脂肪酸や糖質を持続的に酸化燃焼させるため、疲労物質が蓄積しにくく長時間の連続稼働に秀でています。マラソン選手が何時間も走り続けられるのは、この遅筋線維が全身で効率的に稼働しているからです。
これに対して速筋は、ミオグロビン含有量が低く毛細血管も比較的少ないため白っぽく見えます。その代わりに、細胞質内に蓄えられた筋グリコーゲンを酸素なしで急速に分解する「解糖系」の酵素活性が桁違いに高く設計されています。数十秒から数分で枯渇する引き換えに、爆発的な収縮速度と巨大な牽引力を生み出す構造です。さらに現代の生理学では、速筋(タイプ2線維)の中にも、持久力を兼ね備えた中間型の「タイプ2a線維」と、純粋な瞬発力特化型の「タイプ2x線維」が存在することが明確に定義されています。