ドライバーの間で長年語り継がれている「給油ランプが点灯しても約50kmは走行可能」という定説。自動車メーカーの設計開発関係者やマニュアルの記載を照らし合わせると、この数値は単なる都市伝説ではなく、明確な設計思想に基づいていることがわかります。かつて日本の高速道路網を整備する際、ガソリンスタンドを備えたサービスエリア(SA)はおよそ50km間隔を目安に配置されていました。つまり、「警告灯が点灯した地点から、次の給油ポイントへ安全にたどり着けるマージン」として設定された歴史的経緯があります。
多くの車種において、エンプティマーク点灯の目安は燃料タンク全体の約10%から15%程度に達したタイミングに設定されています。一般的なコンパクトカーであれば、メーター上の警告灯がついた時点でタンク内にはおよそ5〜6Lの燃料が残されています。JC08モードやWLTCモードの実燃費がリッター15kmであれば、計算上は「75km〜90km」走れる計算になります。これが「50kmは確実に走れる」という安心感の根拠となってきました。
しかし、この計算には大きな落とし穴が存在します。実走行における燃費は、エアコンの使用状況や乗車人数、荷物の重量、道路の勾配によって著しく悪化します。とりわけ真夏の冷房使用時や冬場の暖房、激しい渋滞に巻き込まれた場合、実燃費はカタログ値の半分近くまで落ち込むことも珍しくありません。「50km走れるはず」と過信して走行を続けた結果、わずか30km足らずでエンジンが息継ぎを始め、路上で立ち往生するトラブルが後を絶たないのが現場の実態です。