公募要領の文字面だけでは見えてこないのが、研究室着任直後の現場の生々しい混乱です。SNSや研究者コミュニティのフォーラムには、毎年春になると「4月1日に着任して大学のメールアドレス設定やシラバス作成に追われ、5月上旬の学内締め切りまで実質3週間しかなかった」「前任校からの引っ越し荷物が片付かないまま徹夜で申請書を書いた」といった悲痛な叫びが溢れかえります。
日本学術振興会のピアレビュー(審査員)を複数回経験した国立大学教授の証言によると、審査現場の空気感は極めて合理的かつ時間との戦いです。
「審査員は自身の教育・研究の合間を縫って、1人あたり数十件から100件近い申請書を一気に読み込み、短時間でスコアリングを行います。着任したばかりの若手だからといって下駄を履かせることは一切ありません。むしろ、前職(指導教授の研究室など)の看板をそのまま引きずっているような『ボスの研究の焼き直し』は一瞬で見抜かれ、厳しい評価を受けます」(学術振興会元審査委員)
一方で、審査員が「この研究者を応援したい」と感じるポイントも明確です。自身の過去の博士論文やポスドク時代の蓄積を基礎にしつつも、「自立した独立研究者として、今の新しい研究室・新しい研究設備で何を開始するのか」という固有のスタートラインが明確に示されている計画書は、審査員の間でも一貫して高得点を獲得しています。