とろろ昆布のポテンシャルを「汁物の具」だけに限定してしまうのは、料理の完成度という観点において大きな損失と言わざるを得ません。現在、食通や時短を追求する生活者の間でとろろ昆布レシピ人気が急上昇している背景には、油分や乳製品、炭水化物と結合した際に発揮される「爆発的なうま味のマスキング効果」にあります。
代表的なブレイクスルーがとろろ昆布パスタアレンジレシピです。茹で上げたパスタにオリーブオイル、または有塩バターと少量の醤油を絡め、仕上げにとろろ昆布を贅沢にほぐしながらトッピングします。昆布に含まれる水溶性食物繊維がパスタの茹で汁と油分を瞬時に乳化させ、生クリームを使わずとも濃厚なとろみとコクを生み出します。ここに明太子や千切りの大葉を添えれば、有名専門店の一皿に匹敵する重層的な和風パスタがわずか10分足らずで完成します。
また、北陸地方のソウルフードとして名高いとろろ昆布おにぎり作り方も見逃せません。焼き海苔の代わりにとろろ昆布をご飯の表面全体に優しくまぶす手法ですが、美味しく仕上げるコツは「ご飯の粗熱を少し取ってから、ふんわりと包み込むこと」にあります。湯気が出すぎている状態で密着させると、蒸気で昆布がベタついて食感を損ねてしまいます。具材に酸味の効いた紀州南高梅を仕込み、白ごまを混ぜ込んだご飯にとろろ昆布をまとわせた「Wこんぶ梅おにぎり」は、昆布の酸味と米の甘みが完璧に調和する傑作です。
さらに、近年居酒屋やバルで話題を集めているのが「油揚げのとろろチーズ焼き」です。開いた油揚げの内側にとろろ昆布を敷き詰め、ピザ用チーズを乗せてオーブントースターでこんがり焼き上げるだけで、昆布のグルタミン酸とチーズのイノシン酸・グルタミン酸が絡み合い、お酒の進む極上のおつまみへと昇華します。