救急車の有料化を語るうえで、全国の自治体が注視しているモデルケースが三重県松阪市(松阪地区広域消防組合)が2024年6月から運用を開始した選定療養費の徴収システムです。
松阪市の方式は、「すべての救急搬送を一律有料にする」ものではありません。市内の基幹3病院(松阪中央総合病院、松阪市民病院、済生会松阪総合病院)に救急搬送された患者のうち、「入院に至らなかった軽症者」から原則として選定療養費7,700円(税込)を徴収するという制度設計を採用しました。
導入後の公式公表データや地元取材によると、運用開始から数か月で救急搬送件数は前年同期比で約1割から1割5分前後の明確な減少を示しました。特に夜間や休日の軽症者の搬送が落ち着き、出動の過密化に歯止めがかかるという目に見える成果を挙げています。
なお、制度の公平性を保つため、医師の判断により緊急性があったと認められた場合や、紹介状持参のケース、あるいは通報前に相談専用窓口を利用していた場合などは費用の支払いが免除される厳格な運用基準が設けられています。制度の主眼はあくまで「収益の確保」ではなく、「適正利用を促すナッジ(行動誘導)」にあることが明確に示されています。