横になった際に生じる浮遊感の中で、最も警戒しなければならないのは中枢神経系(脳幹・小脳)の病変です。小脳は体のバランスを司る中枢であり、椎骨脳底動脈と呼ばれる血管の血流不全や血栓によって機能が低下すると、特徴的な浮動性めまいが現れます。
以下のような脳神経外科領域の危険な兆候が一つでも認められる場合は、翌朝を待たずに救急医療機関の受診を検討してください。
- 手足のしびれや脱力感:片方の手や足に力が入らない、箸を落とす、スリッパが脱げる。
- 構音障害・嚥下障害:ろれつが回らない、言葉がとっさに出てこない、水分をうまく飲み込めない。
- 視覚の異常:物が二重に見える(複視)、視野の半分が欠ける。
- 立位・歩行困難:横から起き上がると真っ直ぐ立てず、特定の方向へ倒れ込んでしまう。
- 強烈な吐き気と嘔吐:横になると激しい吐き気が突発的に生じ、冷や汗が止まらない。
一方、上記のような神経麻痺がなく、頭の位置を変えた時に限定して症状が出る、あるいは耳の詰まり感やキーンという高い金属音のような耳鳴りを伴う場合は、まず耳鼻咽喉科でのめまい検査が最優先となります。耳鼻咽喉科では、赤外線CCDカメラを装着して眼球の異常運動(眼振)を観察する「眼振検査」や、聴力検査、直立姿勢のふらつきをミリ単位で測定する「重心動揺検査」を実施します。これにより、内耳の前庭系に問題があるのか、それとも中枢性あるいは頸性の疑いがあるのかを精密に切り分けることが可能です。