夫婦にとって最大の転機のひとつが、長男である寺島眞秀の成長と進路だった。母方は、人間国宝である七代目・尾上菊五郎をはじめとする名門・音羽屋の家系。日仏の血を引く眞秀が伝統芸能の世界へ足を踏み入れる決断をした際、歌舞伎興行を担う松竹株式会社を含め、多方面で大きな話題を呼んだ。
歌舞伎という重厚な伝統の世界に息子を送り出すにあたり、ローラン氏は父親として柔軟かつ温かい眼差しで息子の背中を押した。フランス的な自由な感性を育みながらも、日本の伝統美を重んじる環境を整える。初舞台で見せた堂々たる姿の裏には、妻の寺島しのぶと共に息子の個性を温かく見守り続けた父の存在があった。異文化のバックグラウンドを持つ父親の存在が、若き表現者の可能性をより豊かに広げている。