初登場となった『ドラゴンクエストVI 幻の大地』以降、ゲーム内のテキスト上はひらがなで「いどまじん」と表記されるこのモンスターですが、公式ガイドブックや関連書籍では「井戸に住み着く魔神」「魔人」といった表記の揺れが見られます。なぜ人々の生活に欠かせない平和な村落の井戸深くに、これほど凶暴なモンスターが潜んでいるのでしょうか。
スーパーファミコン版『DQ6』の公式設定資料によると、「元々は清らかな水を守る井戸の守り神だった存在が、大魔王の邪悪な魔力によって精神を操られ、凶悪な魔神へと堕天させられた姿」と明記されています。水資源を守護する土着神であったからこそ、民家のすぐそばにある生活空間に鎮座しており、その聖域がそのまま人間を捕食・襲撃するための凄惨な罠へと転化してしまったのです。
民俗学的な観点からも、古来の日本において井戸は「異界と現世を繋ぐ境界」と見なされてきました。開発陣が仕掛けたこのバックストーリーは、単なるビックリ箱的ギミックにとどまらず、魔王の脅威が市井の生活圏の根底まで侵食している事実をプレイヤーに強烈に意識させる演出装置として機能しています。