1989年から始まった中島みゆきのライフワークである舞台『夜会』。言葉と音楽、演劇が融合したこの唯一無二の表現空間を知る者ならば、「家出」の中に『夜会』の芽胞が既に存在していたことに気づくだろう。『夜会』で繰り返し描かれるのは、迷妄の森を彷徨う女たち、居場所を失った魂の救済劇である。
「家出」で提示された「ここではないどこかへ行く」という衝動は、『夜会』における旅や転生のモチーフへと発展していく。初期の小さな一曲に込められた孤立の感覚は、やがて大仕掛けな舞台芸術へとスケールアップし、人間の運命を問いかける壮大なテーマへと結実した。彼女の作品群を点ではなく線で捉えたとき、「家出」はまさにその壮大な物語の原点に位置する重要作として立ち上がってくる。