自動車アセスメント(JNCAP)の公開試験や、JAFによる特設コースでの急ブレーキ制動実験では、ドライバーの認識と実機の挙動に大きな乖離があることが浮き彫りになっています。
テスト走行に参加した一般ドライバーへの聞き取りやSNS上のドライブレコーダー投稿の検証では、次のようなリアルな生の声が散見されます。
「濡れたバイパスで前のトラックが急ブレーキを踏んだのでペダルを床まで踏み込んだが、ガガガと激しい振動が足に伝わってパニックになり、反射的に一瞬ブレーキを緩めてしまった」(40代・普通車ドライバーの体験談)
「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)装着車だからと過信していたが、豪雨の首都高で前走車の減速に検知が遅れ、車内警告音が鳴ったときには追突寸前。ステアリングを切って路肩に逃げるしかなかった」(30代・営業職)
ここで重要な技術的ファクトが、ABS 制動距離 影響についての誤解です。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は、急ブレーキ時にタイヤが完全にロックして操舵不能に陥るのを防ぎ、「ブレーキを踏みながら障害物をステアリング操作で回避できるようにする」ための装置です。乾燥したアスファルトでは最短停止距離に近い性能を引き出しますが、雪道や砂利道、ウェット路面ではポンピング制御が断続的に介入するため、熟練ドライバーがロック寸前を保った状態よりも制動距離自体は伸びてしまうケースがあります。ABSが作動してペダルがキックバック(振動)しても、決して緩めず奥まで踏み続けることが現場の鉄則です。