ネット上や一部の視聴者の間で長年語られがちなのが、「姉・上白石萌音と妹・上白石萌歌の明確な違いが分からない」「実力や役柄の路線が重複しているのではないか」という誤解です。しかし、2人のキャリアと表現アプローチを丹念に追跡すると、極めて明確な棲み分けとそれぞれの際立った個性が浮かび上がります。
実姉である上白石萌音は、舞台やミュージカルで鍛え上げられた豊かな声量と、古風で情感豊かな情緒表現、いわば「王道の情愛と古典的気品」を武器に朝ドラヒロインや名作舞台を牽引してきました。これに対し、妹の上白石萌歌は、長身(身長163cm)を活かしたスタイリッシュな佇まいと、どこかアンニュイで現代的なエモーショナルさ、サブカルチャーやアート映画にも自然に馴染む「現代的なリアリズムと陰影」を最大の武器としています。
映画における2人の本格的な共演は、前述の『羊と鋼の森』(2018年)が映画としては唯一の実写共演作です。劇中において、萌音が演じた姉・和音(ピアノに真摯に向き合う求道者)と、萌歌が演じた妹・由仁(奔放で感覚的な天才肌)という配役は、実際の姉妹関係のダイナミズムを反映させつつも、それぞれの役者としての質感を絶妙に対比させたキャスティングでした。
映画関係者の間では、「実姉妹でありながら互いの個性を尊重し、決して安易なバーター共演に頼らず、個別のオーディションと実績で役を勝ち取ってきた」というプロフェッショナリズムが高く評価されています。2人の間に無用な競合関係はなく、むしろ日本映画界において異なる個性を放つトップランナーとして共存しているのが偽らざる真実です。