日本における蛇の造形美を語るうえで、江戸時代の庶民文化と切っても切れない関係にあるのが浮世絵だ。当時、中国の大衆小説『水滸伝』が日本で翻案・出版されると、そこに登場する勇猛な豪傑たちの姿に人々は熱狂した。そのブームを決定づけたのが、天才絵師・歌川国芳が描いた躍動感あふれる武者絵である。
国芳の描くダイナミックな構図や生き生きとした蛇の描写は、当時の職人や若者たちの心を掴み、そのまま肌へと移植されていった。こうして江戸の粋と絵師の熱量が融合することで、世界に類を見ない芸術性を誇る日本伝統刺青の様式美が確立されたのである。