『鋼の錬金術師』の最終幕において、全読者を熱狂させたのがエドワード・エルリックとウィンリィの恋の決着です。錬金術の力を失い、人間としての足で新たな一歩を踏み出そうとするエドがリゼンブールの駅のホームで放った言葉は、漫画史に燦然と輝く名シーンとして語り継がれています。
「等価交換だ。俺の人生半分やるから、お前の人生半分くれ!」
錬金術師として世界の理に縛られてきたエドらしい、極めて不器用で真っ直ぐなプロポーズに対し、ウィンリィは呆れと照れを隠せない表情を浮かべながらも、即座にこう切り返しました。
「ほんとバカね……なんで半分なのよ。全部あげるわよ」
自身の言葉の重さに気づいて慌てて「9割……やっぱり8割!」と撤回しようとする彼女の愛らしさと、それを聞いて大笑いするエドの姿は、血塗られた旅路の果てに掴み取った最高の幸福の象徴でした。二人の関係性は、単なる恋愛関係の成就という以上に、対等な人間同士が互いの存在を尊重し合う契約でもありました。
物語の結末を飾るエピローグの集合写真では、エドとウィンリィが正式に結婚し、長男と長女の2人の子供を授かった姿が明確に描かれています。傍らには二人を見守り続けてきた祖母ピナコ・ロックベルの柔らかな笑顔があり、エドの腕には我が子が抱かれています。錬金術という奇跡に頼るのではなく、日々の生活を地道に積み重ねていく道を選んだエドと、リゼンブールで義肢を整備しながら夫の帰る場所を守り抜いたウィンリィ。二人が築き上げた家庭は、喪失と絶望から始まったエルリック兄弟の旅の、もっとも温かな到達点となりました。