当時、イギリスの保守系タブロイド紙『デイリー・メール』などを中心に、「マイケミは若者に自殺を助長する危険なエモ・カルトだ」というセンセーショナルなバッシングが巻き起こった歴史があります。ネット掲示板やSNSの一部でも「病みソング」「死を美化している」といった誤った解釈が流布されることがありました。
しかし、これは完全な誤謬(ごびゅう)です。歌詞やコンセプトを丁寧に読み解けば明白なように、本作のテーマは「死の称賛」ではなく「絶望の淵からの生への執着」です。「Famous Last Words」のクライマックスで歌われる以下の言葉は、その何よりの証拠です。
「I am not afraid to keep on living, I am not afraid to walk this world alone.」
(生きていくことを僕は恐れない、この世界をたった一人で歩いていくことを僕は決して恐れない)
社会学や心理学の観点から見ても、本作は若者が直面する「疎外感」「アイデンティティの喪失」「自己嫌悪」といったトラウマ的感情に対する一種の代理カタルシス(感情の浄化作用)を果たしています。弱さや痛みを隠蔽せず、一度どん底まで曝け出した上で「それでも生きろ」と手を差し伸べるからこそ、マイケミは単なる流行を超えた精神的支柱となったのです。