不動産ポータルサイトの解説記事や営業トークなどで、長年まことしやかに語られてきたのが「SRC造はRC造の上位互換であり、防音性も圧倒的に優れている」という説です。しかし、建築構造設計の専門家や実務者の見解は異なります。結論から言えば、SRC造とRC造の間で、壁や床そのものが持つ遮音性能に大きな差はありません。
この誤解が生じる背景には、SRC造(Steel Reinforced Concrete:鉄骨鉄筋コンクリート造)の仕組みに対するイメージ先行があります。SRC造は、太い「鉄骨(H鋼など)」の骨組みの周囲に「鉄筋」を配筋し、そこに「コンクリート」を打ち込んで一体化させた構造です。一方、RC造(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート造)は、鉄骨の芯がなく「鉄筋」と「コンクリート」のみで強度を担保します。
「鉄骨が入っている分、SRC造の方が音が伝わりにくいのではないか」と考えられがちですが、音響工学における遮音の基本原則は「質量則(質量が重い素材ほど音を遮衰させる物理法則)」です。空気を伝わる生活音(話し声、テレビ音、音楽など)を遮るのは、部材に含まれるコンクリートの厚みと面密度であり、内部に埋め込まれた鉄骨の有無自体は壁の遮音性にほとんど影響を与えません。
Yahoo!知恵袋や住宅相談フォーラムなどに寄せられた現場の証言でも、「SRC造分譲賃貸だからと期待して入居したが、RC造の旧居と遮音性は変わらなかった」「SRC造でも戸境壁が薄ければ普通に隣のクシャミが聞こえる」といった体験談が数多く報告されています。つまり、物件の構造種別(SRCかRCか)だけで防音性能を判断するのは、極めて危険なアプローチなのです。