脳科学者の中野信子氏の知見に照らし合わせると、悪口を言わない人の脳内メカニズムには、感情に流されない高度な前頭前野の働き(合理的抑制力)が関係しています。生物学的に人間は、集団内で「共通の敵」を作ったり裏切り者を糾弾したりすることで結束を高める性質があり、悪口を言う際に快楽物質であるドーパミンが分泌される仕組みを持っています。
そうした本能的な快楽に流されず、悪口を口にしない人は、極めて高いメタ認知能力とリスク管理能力を備えています。「悪口を言えば一時的な連帯感は得られるが、将来的に自分の評判を落とすリスクが高い」「言った言葉は巡り巡って自分に返ってくる」という損得勘定を瞬時に計算できる知性を持っています。
ただし、この計算高さは周囲から「計算高く腹黒い」「打算的で裏の顔がある」と解釈される諸刃の剣でもあります。感情的な共感を優先するコミュニティにおいて、合理的な自衛に徹する賢い人は、時に異質な存在として孤立を招く危険をはらんでいます。