導入から時間が経過した現在でも、野球ファンの間では申告敬遠に対する賛否両論が定期的に議論されています。その理由は、効率化という合理性と、スポーツが持つ不確実性のドラマが衝突するためです。
守備側・運営側が得られる明確なメリット
- 投手の消耗防止:全力投球ではないとはいえ、マウンドから捕手へ投げる動作は肩肘に負荷をかけます。これを削減できる恩恵は大きいです。
- 守備ミス・暴投の完全排除:かつて稀に見られた「敬遠球がすっぽ抜けて暴投になりサヨナラ負け」という不測の事故を100%防ぐことができます。
- 試合進行のスリム化:無駄な投球間隔を省くことで、中継視聴者や現地観客の集中力を切らさない効果を生んでいます。
「つまらない」「情緒がない」と批判されるデメリット
一方で、オールドファンやドラマ性を重視する観客からは「つまらない」という声が根強く残っています。
かつての日本プロ野球では、敬遠球が甘く入ったところを打者が踏み込んでサヨナラヒットを放った名場面(1999年の新庄剛志氏による敬遠球サヨナラ安打など)や、捕手が捕球し損ねて走者が生還する劇的な幕切れが存在しました。申告敬遠によって「敬遠球を投げる間に起きるかもしれない奇跡や波乱」が完全に消滅したことが、物足りなさを生む要因となっています。
また、強打者に対して球場全体から浴びせられるブーイングや、マウンド上の投手が感じる特有の重圧といった心理戦のグラデーションが、ベンチの合図一つで事務的に処理される点に寂しさを覚えるファンも少なくありません。