「子安武人=悪役・裏切り者」というパブリックイメージは非常に強固ですが、これは長いキャリアのほんの一面に過ぎません。この偏った認識に対しては、ファンの間でもたびたび議論が巻き起こります。
90年代を席巻した「正統派美形主人公・二枚目」の系譜
1990年代、子安武人は『新機動戦記ガンダムW』のゼクス・マーキスや『少女革命ウテナ』の桐生冬芽、『ヴァイスクロイツ』の藤宮蘭(アヤ)など、端正で憂いを帯びた美形キャラクターの主役級を総なめにしていました。声優ユニット「Weiß」を自ら企画・原案を手掛けて結成し、現在の声優アーティスト・メディアミックス展開の先駆者となった実績は外せません。
不条理ギャグを真剣にやり切る職人魂
美形や悪役のイメージを自ら軽やかに壊した金字塔が『ボボボーボ・ボーボボ』です。常人には理解不能なハイテンションギャグと超展開を、持ち前の重厚な美声で真正面から熱演。「ふざけた台詞を最高峰の技術で叫ぶ」というギャップが伝説的な笑いを生み出しました。
近年でも『異世界おじさん』のおじさん役で見せた哀愁とコメディの融合など、シリアスから不条理劇まで自在に行き来する柔軟性こそが、第一線に残り続ける本質的な理由です。