「バスの運転手は拘束時間が長すぎる割に稼げない」というイメージが定着したのには、長年の構造的な要因が存在します。最大の理由は、「基本給が低く抑えられ、長時間残業をこなすことで手取りを補填する給与設計」が業界の通例となっていた点にあります。
バス事業は運賃が国の認可制(または届出制)であり、燃料費の高騰や少子高齢化による乗客減少を即座に運賃へ転嫁することが難しい構造でした。そのため、人件費が圧縮されやすく、運転手は月に60〜80時間近い時間外労働を行ってようやく満足のいく月給を得ていた背景があります。
しかし、2026年4月に施行された労働基準法改正(年960時間以内の時間外労働上限規制および改善基準告示の改正)により、従来の「残業代頼みの働き方」は完全に不可能となりました。1日の拘束時間は原則13時間以内(最大15時間)、休息期間は継続11時間以上を基本(最低9時間)とする厳格なルールが適用されたためです。
この結果、一部の事業者では残業代の減少による手取り減額が発生したものの、ドライバーの流出を恐れる事業各社は「基本給のベースアップ」「各種手当の定額化」「年間休日の増加」に踏み切らざるを得なくなりました。2026年から2026年にかけて、大手私鉄系を中心に月額1万5000円〜3万円規模の基本給引き上げが相次ぎ、給与体系は「残業依存型」から「基礎体力型」へと劇的な転換期を迎えています。