毎日の給仕で最も疑問が生じやすいのが、「ご飯とお水・お茶の位置関係」です。基本形としては、「右側にご飯(仏飯器)、左側にお水またはお茶(茶湯器)」を配置します。仏教圏において右側が上位とされる伝統に基づくもので、炊きたてのご飯を上位である右側に配するのが通例です。
お水とお茶を両方供える「一汁一菜」形式をとる寺院や地域では、中央にご飯を据え、その左にお水、右にお茶を並べる三位一体の配置も見られます。ただし、この基本形は宗派の教理によって大きく変化します。
- 浄土真宗(本願寺派・真宗大谷派):最大の特色は、「仏壇に水やお茶を供えない」点です。浄土真宗の教義では、亡くなった方はすでに極楽浄土の「八功徳水(はっくどくすい)」という清らかな水で満たされていると考えるため、現世の水をお供えする必要がありません。代わりに「華瓶(けびょう)」と呼ばれる小さな花瓶に樒(しきみ)や青葉を挿して香水を象徴させます。また、ご飯は「盛糟(もっそう)」という仏具を用いて、本願寺派は蓮のつぼみ型(円筒状)、大谷派は蓮の実型(円錐状)に高く盛り付けます。
- 曹洞宗・臨済宗(禅宗):修行と日常の規律を重んじる禅宗では、朝一番に炊いたご飯(仏飯)とお茶・お水を中段へ丁寧に供えます。左に水、右にお茶、中央にご飯を配する「中ご飯・左右水分け」の様式が多く用いられます。
- 真言宗・天台宗:密教の儀礼を汲む真言宗では、ご本尊の前にお膳(霊供膳)を供える作法が日常的にも重んじられます。ご飯とお水・お茶を横一列に並べるほか、六道輪廻の思想に基づき、毎朝欠かさず汲みたての水を供えることが功徳とされます。