社殿を取り囲むように聳え立つ巨大な杉の社叢は、参道に足を踏み入れた瞬間に体感温度が数度下がるような圧倒的な静寂を湛えています。その中心に位置するのが、山梨県の天然記念物に指定されている七本杉です。いずれも樹齢1200年を超えると推定される巨木群であり、神社の創建時とほぼ軌を一にして大地に根を張ってきた生き証人といえます。
境内案内によると、七本杉にはそれぞれ固有の名称と信仰が息づいています。 1本目から4本目の「御神木」、そして5本目と6本目が根元近くで寄り添うように並び立つ「連理の杉」は、とりわけ縁結びや夫婦円満、家内安全のご利益を求める参拝者から絶大な信託を得ています。7本目の杉まで巡り、手肌を撫でる霊気を感じながら手を合わせる時間は、都会の喧騒で疲弊した精神を静かに調律してくれます。
さらに本殿から山道を約40分登った奥地には、古くからの禊(みそぎ)場である母の白滝が清烈な水音を響かせています。富士登山に挑む修験者や道祖神の信者たちが、登拝の前に身を清めた神聖な場所であり、滝の傍らには母の白滝神社がひっそりと佇みます。清流の飛沫が舞うこの場所は、天空の鳥居の開放的な明るさとは対照的な、原始の信仰を感じさせる幽玄な空気に満ちており、訪れる者に深い浄化の感覚をもたらします。
また、参拝の証である河口浅間神社 御朱印も高い人気を誇ります。本殿の墨書きに加えて、季節ごとの特別和紙を用いた御朱印や、世界遺産記念の意匠が施されたものが社務所で授与されており、祈りの記録として大切に持ち帰る参拝者の姿が絶えません。