駅名発表に対する反発は、SNS上の愚痴や揶揄にとどまらず、前代未聞の市民運動へと発展しました。発表から間もない2018年12月、エッセイストの能町みね子氏やコラムニストの小島慶子氏らを発起人として、オンライン署名サイト「Change.org」にて駅名撤回を求める署名活動が立ち上がったのです。
キャンペーン名は「山手線新駅の駅名を再考してください」。呼びかけから短期間で賛同者は膨れ上がり、最終的に集まった署名は4万7930筆に達しました。2019年3月、発起人らはJR東日本本社を訪れ、駅名の見直しを求める要望書と署名簿を提出しました。
署名活動に賛同した市民や有識者の主張は、極めて論理的かつ切実なものでした。
第一に、「山手線の公共性と歴史性」です。山手線は単なる一企業の私鉄路線ではなく、東京都心部を環状運転する日本の首都機能の背骨です。地域に数百年にわたって根付いてきた「高輪」という歴史的重みを持つ地名に、商業的なニュアンスの強いカタカナ英語を安易に連結させることへの文化的な抵抗感がありました。
第二に、「案内サインとしての実用性の低さ」です。文字数が8文字と長く、路線図のフォントサイズを縮小せざるを得ないこと、車内アナウンスのテンポを乱すこと、さらには高齢者や外国人にとって「Takanawa Gateway」という表記が直感的な地理把握を阻害するリスクが指摘されました。
しかし、JR東日本側の対応は極めて頑なでした。提出された署名を受け取りつつも、「駅名はすでに決定したものであり、変更の予定はない」と回答。巨額のシステム改修費やサイン印刷のスケジュールがすでに動き出していた実務的都合もあり、署名運動が駅名撤回という具体的な果実を結ぶことはありませんでした。この企業のゼロ回答姿勢が、さらなる冷笑と失望をネット社会に残すことになります。