サウザーの叫びを単なる悪役の傲慢さと受け取るのは早計です。彼の苛烈な生き様の根底には、心理学における「防衛機制(反動形成)」の極致とも言える深い悲劇が存在します。
南斗鳳凰拳は、一子相伝にして構えを持たない「最強の拳」と称されます。伝承者を継承する最終試練において、サウザーは目隠しをしたまま襲いかかる敵を返り討ちにしますが、その相手は誰あろう、彼を実の息子のように慈しみ育ててくれた最愛の師父オウガイでした。自らの手で親代わりの師を殺害せざるを得ない宿命に直面した少年サウザーは、精神崩壊の危機に瀕します。
その慟哭の中から生まれたのが、「愛深きゆえに愛を捨てた」という歪んだ決断でした。愛があるからこそ人は苦しみ、悲しむ。ならば最初から愛など捨て去り、情愛や哀憐の情を一切寄せ付けぬ冷徹な怪物になれば二度と傷つくことはない――。この悲壮なトラウマの裏返しこそが、「退かぬ!! 媚びぬ!! 省みぬ!!」という誓いだったのです。
臨床心理学の視座で見れば、彼の態度は傷つきやすさを極端な支配欲と全能感で覆い隠す「代償行為」にほかなりません。だからこそ読者は、残虐非道な暴君でありながら、死に際にケンシロウの温もりに触れて「お師さん……」と涙を流したサウザーの姿に胸を締め付けられ、四半世紀以上を経てもその名言を語り継ぎ続けているのです。