「歯磨き粉をつけてしっかり磨いているのに、なぜ口が臭うのか」という疑問に対する歯科医学的な答えは明確です。口臭の主原因である揮発性硫黄化合物(VSC:硫化水素やメチルメルカプタンなど)は、歯の表面ではなく、主に「歯と歯の間」や「歯周ポケット」などの酸素が届きにくい密閉空間で増殖する嫌気性菌によって生み出されているからです。
日本歯科保存学会などの臨床データによると、一般的な歯ブラシのみでブラッシングを行った場合のプラーク除去率は約61%にとどまります。つまり、どれほど高級な歯磨き粉を使って長時間ブラッシングしても、歯間のプラーク(細菌の塊)はほぼ手つかずのまま放置されているのが現実です。
歯間に溜まったプラークは、わずか1ミリグラムの中に約1億匹以上もの細菌が存在すると言われます。これらの嫌気性菌が食べかすに含まれるタンパク質を分解・発酵させるプロセスで、いわゆる「排水溝のようなドブ臭」「腐卵臭」と形容される強烈なガスを排出し続けます。デンタルフロスを導入して口臭が治ったと実感する人が続出する背景には、この悪臭の発生源である細菌コロニーを物理的に破壊・除去できる唯一の手段だからという決定的な理由があります。