児島を訪れる旅行者の多くがまず目指すのが、味野商店街のアーケードを中心に約400メートルにわたって個性派ショップが連なる児島ジーンズストリートです。かつてシャッター通り化が進んでいた旧市街地が、職人の情熱によって世界的なデニム発信地へと生まれ変わった現場には、ジャパンブルーの旗艦店や独自のセルビッジデニムを扱う気鋭のテーラーが軒を連ねます。メインストリートから一本路地に入った工房兼ショップでは、縫製職人が旧式力織機(シャトル織機)で織り上げた生地の風合いを直接解説してくれる場面に出くわすことも少なくありません。
ものづくりの深層に触れるなら、少し足を延ばしてベティスミスジーンズミュージアムを外すことはできません。日本最古のジーンズ工場が運営する同施設では、1960年代の貴重なヴィンテージミシンや歴史的資料の展示に加え、リベット打ちやボタン付けを自分で選んで加工するオリジナルジーンズ作り体験が旅の記念として圧倒的な支持を集めています。
さらに、児島のものづくり文化の裾野を物語る児島学生服資料館は、知る人ぞ知るディープな名所です。国内で流通する学生服の大部分を生産してきた児島の歴史的背景、大正から昭和にかけてのポスターや懐かしの制服展示は、単なる懐古趣味にとどまらず、産業技術が生活文化をどう支えてきたかを実感させます。
産業史のもう一つの頂点を示すのが、製塩王・野﨑武左衛門の威勢を今に伝える旧野﨑家住宅です。約3,000坪の敷地に建ち並ぶ土蔵群や手入れの行き届いた枯山水の主庭は、塩田開発で莫大な富を築いた当時の豪商の暮らしぶりを雄弁に物語っており、国の重要文化財にふさわしい静謐な気品を放っています。