教育現場や文字指導の現場取材を進めると、筆順の誤認に関して興味深い現象が浮かび上がってきます。大手通信教育会社や書道教室の指導員への聞き取り調査によると、小学校低学年時に正しい筆順を一度は完璧にマスターした児童であっても、中学生から高校生、そして大学生へと進学するにつれて誤った自己流筆順へ先祖返りしてしまうケースが後を絶ちません。
大手質問サイト(Yahoo!知恵袋など)やSNS上でも、「子どもの宿題を見ていて『お父さん、書き順が逆だよ』と指摘されショックを受けた」「縦から書いた方が左右対称を取りやすい気がしていた」といった告白が定期的にバズを生んでいます。
ある都内書道教室の師範は次のように語ります。
「文字を速く書こうとする思春期のノート筆記において、人間は『中心線を先に引いて左右に均等に肉付けしたい』という視覚的対称性の本能に引っ張られやすくなります。縦棒から入ると左右のバランスは一見取りやすく感じられますが、行書への展開や流麗な運筆という観点では手の動きに無理が生じ、結果として文字の重心が歪んでしまうのです」
認知心理学の観点からも、手書きの頻度が激減した環境下では「視覚的な文字の輪郭記号」ばかりが脳に定着し、「運動記憶(手の軌跡)」が劣化することが分かっています。大人になってから恥をかかないためにも、定期的な漢字書き順チェックは不可欠な習慣と言えます。