日本中を震撼させた点滴殺人事件の真相とは、一体どのようなものだったのでしょうか。事件の舞台となったのは、終末期医療や療養病床を担っていた横浜市神奈川区の「大口病院」です。2016年9月18日から20日にかけて、4階病棟に入院していた88歳の男性患者2名が相次いで急性心不全などで死亡。2人目の遺体から強い異臭と界面活性剤の成分が検出されたことで、警察は異例の連続殺人事件として捜査を開始しました。
捜査関係者の証言や当時の検証資料によると、事件の異常さはその短期間における死亡者数にありました。大口病院の4階病棟では、2016年7月から9月までのわずか2か月余りの間に、およそ48人もの入院患者が死亡していたのです。当時は終末期の高齢者が集まる療養病棟であったため「自然死」として処理されていましたが、同一病棟内での急激な死亡率の上昇は、医療現場における異常事態を示唆していました。
捜査本部は、院内関係者による内部犯行を視野に入れ、未使用の点滴袋やナースステーション内の備品を徹底鑑定。その結果、未使用の点滴袋約50個のうち、10個前後のゴム栓部分に注射針で開けられたとみられる微細な穴が見つかり、内部から界面活性剤「ベンザルコニウム塩化物」が検出されました。これにより、病院という閉ざされた密室で、無差別かつ組織的に毒物が混入されていた戦慄の事実が白日の下に晒されたのです。