突貫工事の本来の意味は、通常であれば数カ月を要する工程を極端に圧縮し、休日返上や夜間作業、人員の過剰投入によって力ずくで納期に間に合わせる緊急工事を指します。「突貫」という言葉の語源は、近代の旧日本陸軍において敵陣へ向けて銃剣を構え、遮二無二突進・突破する白兵戦の号令「突貫突撃」に由来しています。つまり、言葉そのものが「多少の犠牲や損害を顧みず、目標に向かって猪突猛進する」という極めて危うい軍事行動のニュアンスを含んでいるのです。
では、なぜ平時の建設現場において、このような無謀とも言える突貫作業が繰り返されてきたのでしょうか。現場の生の声と業界構造を紐解くと、そこには発注者(施主)の理不尽な要求と重層下請け構造がもたらす逃げ場のない力学が横たわっています。
最大の要因は、テナントの開業日や工場の稼働日、新築住宅の引き渡し日が絶対的な「確定日」として設定されている点です。天候不順による雨天中止や、施主側の気まぐれな設計変更・追加要望によって序盤の工程が1カ月遅延したとしても、最終納期は1日たりとも後ろ倒しにされません。工期が遅れれば発注者から莫大な遅延損害金(違約金)を請求される恐れがあるため、元請けゼネコンや下請けの専門工事会社は、すべての遅れを現場作業の強行軍によって吸収せざるを得ない構造的トラップに陥るのです。