ひとくちに「江戸時代の枕」といっても、全員が同じ箱枕を使っていたわけではありません。身分や性別、用途に応じていくつかのバリエーションが存在しました。
代表的な枕の種類として、主に以下の3タイプが普及していました。
- 箱枕(はこまくら):木製の台座の上に「括り枕」と呼ばれる小さな綿クッションを括り付けたもの。主に日本髪を結う女性や遊女、髷を美しく保ちたい町人が使用。
- 木枕(きまくら):クリやスギなどの木材をそのまま削り出して作った枕。箱枕よりも簡素で、主に一般庶民の男性や職人、旅籠などで広く使われた。
- 括り枕(くくりまくら):布袋の両端を紐で絞り、中に籾殻(もみがら)や蕎麦殻(そばがら)を詰めたクッション枕。髷を気にしなくてよい幼子や、髪をほどいて休む際に用いられた。
このように、髷の維持が必要な大人は木枕や箱枕で首を固定し、そうでない場面では柔らかい括り枕を使うという、明確な生活の棲み分けがなされていました。