この物語の最大の面白さは、稚児が抱く「見栄とプライド」と「食欲」のせめぎ合いにあります。
寺にいる稚児は身分の高い家の子息であることが多く、周囲の僧たちからも大切に扱われていました。だからこそ、「夜食のぼた餅を今か今かと待っていた」と周囲に思われるのは、子ども心にも恥ずかしくて耐えられなかったのです。
「一度目の呼びかけはスルーして、二度目で『ふわぁ』と起きたふりをしよう」という完璧な計算。しかし、僧たちの「起こすのは可哀想だ」という親切心が完全に裏目に出てしまいます。目の前で響く「ひしひし(むしゃむしゃ)」という咀嚼音に耐えかね、何分も経過した後に響き渡る間の抜けた「えい(はい)」。この絶妙な間と子どもの可愛らしい狡さが、千年の時を超えて現代の読者の笑いを誘います。