そもそも、愛猫がなぜ感染したのかという疑問に対して、獣医疫学調査が示す猫エイズ発症の理由と感染経路は極めて明快です。主な感染ルートは、感染猫との激しいケンカによる咬傷(ウイルスを含む唾液が血流に入ること)です。元野良猫や過去に脱走歴のある去勢前のオス猫に感染例が多く見られるのはこのためです。空気感染や単なる同室飼育、食器の共有などで感染する確率は極めて低いことが実証されています。
発症後に「余命1か月」と宣告されたある飼い主の猫エイズ余命宣告からの看護記録を紐解くと、そこには現場ならではの苦闘と希望が記録されています。
「11歳で口内炎が悪化し、エイズ発症と診断された時は目の前が真っ暗になりました。激しい体重減少と貧血で『年を越せるかどうか』と言われましたが、自宅での定期的な皮下点滴と、痛みを極限まで抑える鎮痛パッチの処方を継続。フードを数種類用意し、スプーン一杯でも口にしてくれたら褒める毎日を続けました。結果として、愛猫は宣告から1年2か月にわたって大好きな日向ぼっこを楽しみ、穏やかに旅立ちました。」(首都圏在住・愛猫家手記より)
SNSや相談コミュニティを見渡すと、「自分の室内管理が甘かったせいで感染させたのではないか」と自責の念に苦しむ飼い主の声が数多く見受けられます。しかし、過去を悔やみ続ける精神的重圧は、同調性の高い猫にストレスとして伝播してしまいます。大切なのは過去の悔悟ではなく、「今、目の前にある苦痛をどう取り除くか」へと意識を切り替える姿勢です。