全国の鮨愛好家が「札幌遠征の最重要拠点」として名を挙げるすし処うえの。その予約シートの争奪戦は、年を追うごとに過熱の度合いを増しています。これほどまでに席が埋まり続ける背景には、単なるメディアの露出や一過性のブームでは片付けられない、構造的な理由が3点存在します。
第一の理由は、「わずか8席前後という極小の客席設計」です。店主である上野広行氏が一人ひとりの客の咀嚼速度、酒の進み具合、表情の微細な変化にまで完璧に目配りを行き届かせるため、カウンターは敢えて広げられていません。1回転、あるいは丁寧な進行による限定的な案内を基本としているため、1日に足を踏み入れることができるゲストは極めて限られます。
第二の理由は、「常連顧客による次回予約の定着率」の高さです。一度そのもてなしと握りに魅せられた地元財界人や全国の鮨通が、席を立つ瞬間に数ヶ月先の予約を押さえて帰るサイクルが確立されています。その結果、一般開放される枠そのものが物理的にわずかしか残らないという需給バランスが生じています。
第三の理由は、「2020年代半ばから続く札幌鮨シーンへの国際的注目と富裕層の流入」です。新千歳空港を経由して北海道を訪れるインバウンドの富裕層や国内の美食トラベラーが、東京の高級鮨店(おまかせ3万円〜5万円超が常態化)と比較した際の「圧倒的な費用対効果と確かな技術」に気付き、予約合戦に参入している点が拍車をかけています。