通り魔事件の恐ろしさは、前兆を察知することが極めて困難なまま、一瞬にして生命の危機に晒される点にあります。法廷証言や報道機関の個別インタビューで語られた生存者たちの証言は、現場の混乱と恐怖を克明に物語っています。
池田小事件や秋葉原の現場に居合わせた生存者は、「最初はパニック映画の撮影か、単なる酔っ払いの喧嘩だと思った」「悲鳴が聞こえた瞬間には、すでに目の前に刃物を持った男が立っていた」と述懐しています。人間の脳は、あまりに非日常的な事態に遭遇すると現状を都合よく解釈しようとする「正常性バイアス」が強く働きます。この認知の遅れが、避難を一瞬遅らせる決定打になりかねません。
また、奇跡的に一命を取り留めた被害者であっても、重い後遺障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ続け、背後から近づく足音や人混みに対する恐怖が何年経っても消えないという過酷な現実が続いています。