劇場アニメ版(1984年公開)と全7巻の原作漫画版では、巨神兵の位置づけとストーリー上の役割が根本から異なります。映画しか観ていない読者にとって、原作での巨神兵の扱いは衝撃的な展開の連続となります。
映画版では、ペジテ市の地下から発掘された巨神兵の胎児をトルメキア軍の皇女クシャナが強奪。腐海から押し寄せる王蟲の大群を殲滅するため、未成熟な状態で無理やり孵化させられます。その結果、全身の肉体が自重と熱に耐えきれずドロドロに融解しながらプロトンビームを2発放ち、そのまま朽ち果てて絶命しました。
一方、原作漫画における巨神兵は、物語中盤から終盤にかけての最重要キャラクターとして君臨します。トルメキアと敵対する宗教国家「土鬼(ドルク)諸侯連合」がペジテから奪取した個体は、ドルクの禁じられた技術で培養され、最終的にナウシカが持つ「秘石」を鍵として完全覚醒を果たします。
原作において、目覚めた巨神兵は目の前にいたナウシカを刷り込みによって「母親」と認識します。ナウシカは古代語で「無垢・純潔」を意味する「オーマ」という名を授けました。オーマは知能の爆発的な成長を見せ、最初は「ママ、ぼく、あるく」といった幼児言葉だったものが、数時間で「我が母よ、私は調停者にして戦士。法において命を裁定する」と流暢に語るに至ります。この急激な精神的進化の描写こそ、原作漫画の白眉です。