イチローがスパイクを脱いだのは、45歳5ヶ月のときだった。常人に真似できない徹底的なコンディショニング管理により、肉体の衰えを極限まで抑え込んできた男。彼にとって45歳での幕引きは、決して「体力の限界」だけが理由ではなかった。
当時のインタビューや周囲の証言を辿ると、出場機会の減少とチームからの役割の変化が重くのしかかっていたことが解る。ベンチを温める時間が増えても、準備を怠ることは決してなかった。だが、アスリートとしてのプライドと、試合に出続けて結果を残したいという本能との狭間で、激しい葛藤が続いていたという。45歳という年齢は、情熱と現実が交差した末の、極めて清々しくも残酷な節目だった。