元柳斎がユーハバッハ戦で冷静さを欠いた決定的な引き金となったのが、2000年来の腹心である一番隊副隊長・雀部長次郎忠息(ささきべ ちょうじろう ただおき)の惨殺でした。
雀部は若き日に元柳斎の頭部にある傷跡の形状から「字(あざな)」を巡る契りを交わし、生涯をかけて山本の背中を支え続けることを誓った唯一無二の忠臣でした。自らも隊長格に匹敵する雷系統の卍解「黄煌厳霊離宮(こうこうごんりょうりきゅう)」を習得しながら、生涯副隊長の座に留まり続けた男です。
その雀部が、滅却師ドリスコール・ベルチに卍解を奪われた末に無惨な死を遂げた。この事実が、普段は厳格で揺るぎない元柳斎の胸中に「復讐という名の修羅の炎」を再燃させました。ドリスコールを一撃で炭化させた後、元柳斎はそのまま敵の総本山へと突撃してしまいます。この動揺と激昂こそが、敵の用意した影武者の罠に嵌まる最大の要因となりました。
そして物語は、千年前の「初代護廷十三隊」の真実へと繋がります。ユーハバッハの回顧によって明かされた初代十三隊の実態は、正義の組織などではなく、山本元柳斎重國が束ねた「恐るべき殺し屋集団」でした。当時は敵を殲滅するためならあらゆる残虐行為を辞さず、規律も慈悲も存在しない血塗られた集団だったのです。
野蛮な獣たちの群れを、長い時間をかけて法と秩序を遵守する「護廷」組織へと昇華させたこと自体は歴史的な功績でした。しかし、その高潔な理念が、結果としてかつての自分自身が持っていた絶対的な冷酷さを奪うという皮肉な結末をもたらしたのです。