ネット上のQ&AサイトやSNSで頻繁に見かけるアドバイスの中に、「水色がくすんだら黄色を少し足すと鮮やかになる」という言説があります。しかし、取材班が色彩物理学の専門家に検証を求めたところ、この通説には極めて深刻な誤解が含まれていることが判明しました。
もし手元の濁った水色が「ウルトラマリン(赤みを含む青)+白」で作られていた場合、そこに黄色(イエロー)を投入すると、絵の具内部で「赤・青・黄」の三原色がすべて揃ってしまうことになります。減法混色において、三原色がパレット上で合流することは「黒・灰色(濁色)」への直行便を意味します。鮮やかになるどころか、カーキ色やドブ川のような濁った緑灰色へと致命的な変質を遂げてしまうのです。
くすまないパステルブルーの作り方として真に有効なリペア処方は、「濁った混色に別の色を足して直そうとしないこと」です。失敗した絵の具は背景の影色や別の用途へ回し、初めからシアン系の顔料を用いて、白に対して極小量の青を添加し直す方が、結果としてコストも時間も圧倒的に節約できます。