映画史に輝くスロースのビジュアルは、当時最高峰のアナログ特撮技術と俳優自身の凄まじい忍耐によって生み出されました。メイクアップを担当したのは、後に『スタートレック』シリーズなどでアカデミー賞を受賞する特殊メイク界の巨匠マイケル・ウェストモアらの一流チームです。
撮影期間中、ジョン・マツザックは毎朝午前5時にスタジオ入りし、約5時間におよぶメイクアップ工程に耐え続けました。顔全体を覆うラテックス製の人工皮膚は皮膚呼吸を著しく妨げ、スタジオの照明熱によってマスク内部はサウナのような過酷な環境だったと記録されています。
特に技術陣を悩ませたのが、右側の下がった眼球のギミックです。当時の技術では俳優の筋肉の動きだけで不規則な表情を再現できなかったため、義眼の中に超小型モーターを組み込み、カメラの死角からスタッフがラジコン送信機で遠隔操作していました。少しでも汗や水が内部に入るとモーターがショートする危険があったため、水浸しの海賊船セットでの撮影は常に緊張の連続でした。
過酷を極める撮影現場において、ジョン・マツザックは弱音を一切吐かず、共演した子どもたちを常に気遣っていました。特にチャンク役のジェフ・コーエンとは撮影合間にも本物の兄弟のように親しく接し、あの名コンビの温かな空気感は現場での信頼関係から自然に生まれたものでした。