SNSやネット掲示板などで「頑固な汚れにはウタマロ石鹸」という裏ワザが頻繁に拡散されているが、ダウンジャケットの洗濯に固形ウタマロ石鹸を使用するのはNGである。これには明確な化学的・構造的理由が存在する。
ウタマロ石鹸(固形)は弱アルカリ性であり、さらに白さを際立たせるための「蛍光増白剤」が配合されている。一般的なダウンの表地に用いられるナイロンや高密度ポリエステル、そして中綿の天然羽毛(ダウン・フェザー)はアルカリ性に弱く、油分を奪われやすい性質を持つ。弱アルカリ性石鹸をダウンに使うと、羽毛が持つ天然の油脂分まで脱脂してしまい、ダウン特有のふんわりとした保温性(フィルパワー)が著しく低下する。
さらに、濃色(ブラック、ネイビー、カーキ等)のダウンに蛍光増白剤が付着すると、そこだけ白く色褪せたように変色・色ムラを起こすリスクが極めて高い。加えて、石鹸カスは非常に水に溶けにくいため、部分洗いやすすぎが不十分になりやすく、乾燥後に白く粉を吹いたような輪ジミとして浮き出る「水洗い失敗」の主因となる。
もし自宅でダウン全体や広範囲をケアする場合は、固形石鹸ではなく、弱酸性〜中性に調整されたエマールなどの「おしゃれ着専用中性洗剤」を用いた自宅洗いを選択するのがプロの常識である。万が一、過去の洗濯で輪ジミが残ってしまった場合は、40℃前後のぬるま湯を含ませたタオルで境界線を何度も叩いて残留成分を薄めるか、少量の消毒用エタノールを布に含ませて優しく叩き、揮発させながら汚れをリセットする対処法が有効だ。