もし児童が父親とともに中国本土へ渡航していた場合、法的な救済は極めて困難な局面を迎えます。その元凶となっているのが、国際的な子の奪取に対処する「ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)」の適用を巡る国際政治の現実です。
日本は2014年4月に同条約を締結し、不法に日本へ連れ去られた、あるいは日本から連れ去られた子どもの返還手続きを整備しました。しかし、中国本土は同条約の締約国ではありません(香港・マカオの特別行政区を除く)。この条約上の「空白地帯」が、国境を越えた親権紛争において深刻な司法の壁として立ちはだかっています。
非締約国へ子どもが連れ去られた場合、現地の裁判所で新たに監護権の確認訴訟を提起する必要がありますが、現地の司法が自国民である父親側を優先する傾向は否めません。国際私法の専門家は「中国本土に子どもが入国してしまった場合、日本側の親が法的に子どもを取り戻す確率は極めて低いのが冷酷な現実である」と警鐘を鳴らしています。