花が終わった初夏、茎の先端に青いミニトマトそっくりの球形果実が実り、困惑する栽培者が続出している。このトマトのような実の正体は、ジャガイモの花が受粉して自然に結実した「真の果実(真正種子を含む液果)」である。ジャガイモ(Solanum tuberosum)とトマト(Solanum lycopersicum)は、植物分類学上ともに同じナス科ナス属に属する近縁種であり、果実の外見が酷似するのは生物学的に極めて自然な現象である。
しかし、外見がトマトに似ているからといって口に入れる行為は自殺行為に近い。このジャガイモの実の毒性は極めて高く、植物性天然毒素であるステロイドアルカロイド配糖体(グリコアルカロイド)の「ソラニン」および「チャコニン(カコニン)」が猛烈な濃度で凝縮されている。農林水産省および厚生労働省の公表データによると、可食部である通常のイモ(塊茎)では100gあたり2〜10mg程度の含有量だが、緑色の果実や茎葉には100gあたり50〜100mg以上という高濃度で毒素が蓄積することがある。
この数値は、成人はもちろんのこと、体重の軽い子どもであれば少量摂取しただけで重篤な症状を招くレベルである。実際に摂取してしまうと、以下のようなソラニン食中毒の危険性が直ちに顕在化する。
- 初期症状:口内の強いえぐみ、舌のしびれ、喉のいがらっぽさ
- 消化器症状:摂取後数十分から数時間で生じる激しい吐き気、嘔吐、腹痛、水様性下痢
- 神経・全身症状:激しい頭痛、めまい、倦怠感、重症化に伴う呼吸困難や血圧低下
学校菜園や市民農園など、小さな子どもが出入りする環境では、子どもがミニトマトと誤認して口に含んでしまう事故が懸念される。もし果実が肥大しているのを見かけた場合は、鑑賞用として割り切るか、子どもの手が届く前に速やかに摘果・廃棄する危機管理が不可欠である。