言葉の本来の意味を紐解くと、「お風呂屋さん」とは公衆浴場、すなわち一般にいう「銭湯」を親しみを込めて呼ぶ日常語です。歴史学の文献や『洛中洛外図』などの史料によると、室町時代末期には蒸気を利用した「風呂屋」と、温かい湯を張った「湯屋」が明確に区別されていました。近代以降に両者が統合され、一般家庭に内風呂が普及する以前の日本人の衛生と社交を支えるインフラとして機能してきたのが、本来の風呂屋の姿です。
しかし、現代社会において「お風呂屋さん」という呼称には、もうひとつの決定的な側面が存在します。それが、風俗業界における「ソープランド(個室付き特殊浴場)」を指す隠語としての用法です。夜職に携わる女性たちのSNSプロフィール欄に「お風呂屋さん勤務」と書かれていたり、繁華街の案内所で使われたりする場合、それは街の銭湯やスーパー銭湯のスタッフではなく、個室浴場でサービスを提供するキャストを指しています。
両者の違いは極めて明瞭です。銭湯は「地域住民の入浴機会の確保と公衆衛生」を目的に誰もが数百円で利用できる開かれた施設であるのに対し、隠語としてのお風呂屋さんは「完全個室におけるマンツーマンの接待サービス」を主目的とした成人向け施設です。目的、空間構造、料金体系、そして適用される法律に至るまで、両者は似て非なる別世界を形成しています。