「自閉症と多動症は別々の病気ではないのか」という疑問を持つ人は依然として多いのが現状です。かつての診断基準(DSM-IVなど)では、自閉症とADHDを同時に併記して診断することは原則として認められていませんでした。そのため、どちらか一方の診断名のみが付けられ、臨床現場でも特性の捉え方に混乱が生じる場面がありました。
しかし、米国精神医学会が定めた「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」への改訂以降、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)の併発診断が正式に認められるようになりました。これにより、両方の特性を抱える当事者への多角的なアプローチが臨床の標準となっています。
厚生労働省関連の研究機関や国内外の疫学調査によると、ASDと診断された小児のうち約30%〜50%がADHDの診断基準を満たすほどの顕著な多動性・不注意を併発していることが報告されています。逆に、ADHDと主診断された小児の約20%〜30%に有意な自閉傾向が確認されることも判明しています。多動と自閉症が重複して現れる現象は、例外的なケースではなく、極めて高確率で生じる神経発達のバリエーションの一つです。