「拝啓」と書いた後に続けなければならない時候の挨拶にも、見落とされがちな落とし穴が存在します。時候の挨拶は四季折々の自然の移ろいを共有することで、相手への気遣いを伝える日本独自の文化装置です。しかし、月ごとの季語と文面が乖離しているケースが散見されます。
たとえば、春の気配を感じる2月に「新緑の候」(5月の季語)を使ったり、残暑厳しい9月上旬に「仲秋の候」(本来は秋深まる時期)を用いたりする誤用です。ビジネスシーンで季節感を問わず通年使える万能の表現としては、「貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」や「時下(じか)ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」があります。「時下」とは「この節、今現在」を意味し、時候の挨拶を包括する便利な言葉です。
ここで、実務でそのまま活用できる完成度の高いお礼状の書き方例文を提示します。会食後や商談後に縦書き・横書きの封書で送る際の標準モデルです。
【実務で差がつくお礼状の書き方例文(封書・送付状向け)】 拝啓
新緑の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、先日はご多忙の折、貴重なお時間を割いて弊社事業のご提案をお聞き届けくださり、誠にありがとうございました。
面談の折に〇〇様から頂戴いたしました貴重なご意見は、弊社にとりましても極めて示唆に富むものであり、心より感謝いたしております。
ご要望いただきました追加の試算資料につきましては、来週火曜日までに改めてお届けいたします。
まずは書中をもちまして、略儀ながら面談の御礼を申し上げます。
敬具
2026年5月15日
〇〇株式会社 営業企画部
山田 太郎
株式会社△△
取締役営業本部長 佐藤 次郎様
この例文のように、「拝啓+時候の挨拶」→「主文(感謝の伝達)」→「今後のアクション」→「結びの挨拶」→「敬具」へと自然に流れるのが、受け取った相手に誠意と知性を同時に伝える王道の構成です。