高い注目を集める一方で、室内オーケストラというジャンル特有の誤解や思い込みもネット上には存在します。後悔のない鑑賞体験を得るために、以下の盲点を整理しておく必要があります。
もっとも多い誤解は、「大編成のフルオーケストラ(マーラーや大管弦楽曲)に比べて音が小さく迫力に欠けるのではないか」という懸念です。確かに奏者数自体は30〜40名規模ですが、一人ひとりの音がマス(集団)の中に埋没せず、ダイレクトに耳へ届くため、音楽のダイナミズムや緊迫感は大編成を遥かに凌駕することがあります。打楽器の一撃や弱音(ピアニッシモ)の研ぎ澄まされた緊張感は、室内管弦楽でしか味わえない至高の醍醐味です。
もう一つの盲点は、「地方都市の公設オケだから、プログラムがありきたりなのでは」という先入観です。鈴木秀美体制下の神戸市室内管弦楽団は、むしろ極めて意欲的なプログラミングで知られています。モーツァルトの著名交響曲の隣に、普段滅多に実演で聴けない秘曲や、同時代の知られざる名作、あるいは古今の声楽曲を巧みに配置し、音楽史の文脈を立体的に体験できる構成が練られています。「定番の名曲だけをBGM的に聴きたい」という受動的な態度で臨むと、その濃密な情報量に圧倒されることになります。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
音楽批評の観点から、神戸市室内管弦楽団の定期演奏会に足を運ぶべき人と、慎重に検討すべき人の条件を客観的に提示します。
【絶対におすすめできる人】
- ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、メンデルスゾーンなどの古典派〜初期ロマン派作品に真の躍動感を求めている人
- 大編成オケの大音量よりも、各パートの対話や精緻な和声の移ろいをクリアに聴き分けたい知的な音楽ファン
- 鈴木秀美氏の音楽解釈や、モダン楽器によるピリオド演奏の最先端を体感したい人
【慎重になるべき人】
- マーラー、R.シュトラウス、ラフマニノフのような100人編成による重厚無比な大音響の音圧のみを求めている人
- 音楽的な緊張感よりも、格式ばった雰囲気の中でリラックスして聞き流したいライト層