岐阜県多治見市の小路町交差点近く、本町オリベストリートに佇む「織部うつわ邸」は、老舗陶器商社の株式会社織部が手がける特別なフラッグシップショップです。観光客がここを目指す最大の動機は、単なるショッピング施設では決して味わえない、歴史的建築と工芸美が織りなす「圧倒的な空間没入感」にあります。
店舗の母体となっているのは、かつて陶磁器問屋として繁栄を極めた旧商家の邸宅です。太い梁が天井を走り、磨き上げられた床や土間、趣深い建具がそのまま残されており、一歩足を踏み入れた瞬間から別世界へと誘われます。館内には格式ある茶室も備えられ、美濃焼の原点である安土桃山時代の茶の湯文化が、現代の生活空間へと地続きで息づいていることを肌で感じ取ることができます。
展示販売されているラインナップの幅広さも特筆すべき点です。店内には、佐藤和次氏(早蕨窯)による大胆で力強い総織部の器や、木村元氏の手がける息をのむほど深い藍色が美しい瑠璃美濃コーヒー碗、佐藤正士氏の味わい深い角皿など、美濃を牽引するトップ作家の一点物が堂々と並びます。その一方で、日々の食卓を気兼ねなく彩る小皿やマグカップ、箸置き、温もりある和雑貨までがリーズナブルな価格帯で揃っており、工芸通の愛好家からうつわ巡り初心者まで誰もが自分だけの宝物を見つけられる懐の深さを備えています。
そして、邸内の最深部で来訪者を迎えるのが、四季折々の情景を映し出す「うつわ邸 中庭」です。端正に整えられた庭園の緑と、陰影のある日本家屋のコントラストは、歩き疲れた身体に心地よい静寂をもたらしてくれます。