家庭における下処理への関心の高まりは、ポップカルチャーや世界的な映像コンテンツの進化とも無縁ではない。
木村拓哉が主演を務め社会現象となったドラマ『グランメゾン東京』では、ジビエや熟成肉の下処理において、血抜きや乾燥、ハーブの香気を肉の分子構造へどう滑り込ませるかという緻密なディテールが描かれ、視聴者に強い衝撃を与えた。料理はもはや感覚の産物ではなく、緻密な工学であるという共通認識が一般に定着した瞬間だった。
さらにNetflixの傑作ドキュメンタリー『シェフのテーブル』は、世界各国のトップシェフが素材の「臭み」を「テロワール(風土の個性)」へと昇華させる現場を美麗な4K映像で可視化した。パタゴニアの荒野で肉を熾火にかざすフランシス・マルマンのように、肉の持つ獣性を消し去るのではなく、適切な前処理と火のコントロールによって洗練された野生味へと飼いならす。こうした映像体験を通じて、日本の自炊層もまた、単なる「臭い消し」を超えた、肉料理の本質的なコントロールに強い探求心を抱き始めている。