結論から申し上げますと、文学作品としての『風立ちぬ』の作者は、近代日本文学を代表する作家・堀辰雄(ほり たつお、1904年〜1953年)です。東京・向島に生まれ、東京帝国大学(現・東京大学)国文学科を卒業した堀辰雄は、芥川龍之介の愛弟子としても知られ、ヨーロッパ文学の心理主義的リアリズムと日本の古典美を融合させた独特の文体で昭和文学に不滅の足跡を残しました。
堀辰雄の生涯は、自らも患った「結核」という過酷な病魔との闘いでもありました。信州・軽井沢や富士見高原療養所(長野県)を舞台にした執筆活動を続け、澄んだ高原の空気と人間の生と死を見つめる珠玉の作品を遺しています。堀辰雄の代表作・経歴を振り返ると、師・芥川の自殺の衝撃を昇華させた『聖家族』をはじめ、軽井沢の自然を描いた『美しい村』、古典回帰の名作『かげろふの日記』『菜穂子』など、抒情性と死生観が際立つ傑作が並びます。
その中でも1936年から1938年にかけて発表された自伝的小説『風立ちぬ』は、後世に読み継がれる彼の最高傑作となりました。自らの療養体験と最愛の婚約者との短い日々を克明に描いたこの物語が、約75年の時を経てスタジオジブリの手によってスクリーンに甦ることになります。