監督在任中、矢野氏が積極的に取り入れたのが「予祝(よしゅく)」と呼ばれるメンタルトレーニングでした。あらかじめ勝利や成功をイメージして喜びを分かち合うことで、潜在意識の緊張を解き放つ日本古来の願掛けアプローチです。ベンチで見せた派手なガッツポーズや選手とのハイタッチ、笑顔を絶やさない姿勢は、従来の「昭和型スパルタ指導」に慣れたオールドファンを中心に「軽々しい」「宗教的ではないか」という誤解や揶揄を招いたことも事実でした。
しかし、現代の組織心理学やコーチング理論に照らし合わせると、矢野氏のアプローチは極めて先進的であったことが分かります。
- 心理的安全性の確保:ミスを恐れて萎縮する若手に対し、「失敗を責めず挑戦を褒める」土壌を形成。
- ポジティブ感情の波及効果:感情の伝染理論(Emotional Contagion)に基づき、ベンチの明るいエネルギーでパフォーマンスを底上げ。
- 内発的動機づけの促進:「やらされる野球」から「自ら考えて楽しむ野球」へと選手の意識を変革。
近年では、多くの企業組織が「トップダウンの指示待ち体質」に悩む中、矢野氏のボトムアップ型リーダーシップ論が再評価されています。セミナーや研修の現場では「精神論ではなく、論理的な行動変容の仕組み」として体系化されており、ネット上の表面的なイメージとは全く異なる深い理論的バックボーンが存在します。